元衆議院議員(茨城県第6区)[無所属]大泉ひろ子オフィシャルサイト -大泉ひろこの徒然草(つれづれぐさ)-
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日々雑感
[2023/03/22]
平岡秀夫氏(衆院補選山口2区)を応援する



 安倍元首相の逝去、岸元防衛大臣の引退に伴い、山口県では、4区と2区でそれぞれ衆院選の補選が行われる。4月11日告示、23日投票である。
 2区の自民党候補者は岸信千代氏で、父・元防衛大臣の後を継ごうとする。これに対抗して、平岡秀夫元衆議院議員かつ元法務大臣が、今般は無所属で出馬する。この選挙はG7広島サミットの直前に、岸田政権の是非を問う選挙として観られているが、実はもっと深い意味がある。
 言うまでもなく、山口県=長州は150年以上に及ぶ藩閥政治の人材を担ってきた地である。伊藤博文に始まり、安倍晋三まで全都道府県最多の8人の総理大臣を輩出した県である。山縣有朋や岸信介を思い浮かべる人も多かろう。このことは、近代国家日本の揺籃期から継続してきた、ある種の誤謬が綿々と受け継がれていることを意味する。
 誤謬とは、武家社会を崩壊させ、長州を最上階に置く新たな身分制度を150年の政治史において定着させたことだ。士農工商に代わって長州閥及び平民の二層の政治における身分構造が政治家の世襲を産んだ。勿論、本家は長州の岸家、安倍家だが、類似の身分には、近年の麻生家、小泉家、河野家、岸田家などが加わる。
 つまり、世襲政治、家業としての政治が長州をオリジナルとして作られたのである。家業としての政治は、血族による継続にこそ意味があり、志を遂げる政治とは程遠い。安倍元首相は志のある政治家に見えたが、実は創始者岸信介の遺言の実施を志としたのであって、彼が生きた時代に即したわけではない。
 身分の継続のためには、一応民主主義国家である以上仕掛けが必要だ。安倍元首相は積極的に娯楽番組に登場したが、庶民を装う為政者を好感度をもってコメントするタレントやスポーツ選手が増えた。誰も政治の専門家ではない。放送法の顛末をめぐっての議論は、老舗の悪口を言わせない、老舗は理屈無く老舗だからよいのだを庶民に納得させるために起きた。
 平岡氏は長州の出身ではあるが、藩閥とは無関係の庶民の出だ。大蔵官僚、弁護士という近代的職歴の中で政界まで届いた人だ。平岡氏が闘うべきは、家業政治家を長州のみならず政界から一掃することだ。政治が家業では、借金の先送り、大親分アメリカの追随以外のことはできない。
 平岡氏は、政党の公認を受けず、連合=労働組合の応援も受けない。労働組合は、別の意味で身分制度の最上階にいる「労働貴族」だ。世界に遅れた経済成長や少子化の原因である非正規雇用には冷たい。この新セレブに支援される政党は藩閥政治に有効な対抗ができない。平岡氏は眼前の敵、背後の敵の両方に戦いを挑むことになる。
 最近では、徳川幕府の転覆にはイギリスが暗躍したことが明らかになり、司馬遼太郎の維新の志士による討幕は誤解を招く歴史観であることが指摘されている。藩閥政治がやったことのすべてが悪いわけではないが、今という危機的な世界状況の中で、家業政治家だけは退いてもらいたい。その先鞭を平岡氏につけてもらいたいのである。
 よって、筆者は平岡秀夫氏を応援する。
 

[2023/03/13]
生命倫理と政治



 赤林朗東大教授の退官記念最終講義を聴く機会を得た。赤林先生は、2020年、Bioethics Across the Grobeと題する生命倫理の著作をSpringer Nature出版からオープンアクセスでweb上出版されている。既に世界中で2万件以上のアクセスがあると言う。
 筆者はこの著作にいたく感銘を受けたが、赤林先生が英語で書かれたのは、世界中の研究者や施政者等に、生命倫理は一筋縄ではではない、背後の文化に左右されることを伝えようとしたのである。生命倫理も欧米文化の一翼を担うが、欧米文化の一部とみなされる日本において必ずしも欧米と同一軌道にないことを明確にしている。
 先生自身が、欧米のように早く臓器移植が当たり前になってほしいと考えながら、赤ちゃんに自分の肝臓を移植した母親の死亡に動揺したこと、米国のホスピス医が、患者に真実を伝えることを旨としながら、24時間後に死ぬことを伝えられなかった事実を明らかにしながら、人間の感情は根底では共通したものがあり、しかし、社会的な制度に移行した場合には大きな違いが表れることを語るエピソードである。
 個人情報であることから公表されていないが、死者の意思が臓器移植賛成でも家族によって断られたケースは日本において非常に多いという。先生はそのことを、日本は、生と死の境界があいまいな死生観あるいは宗教的観念を持っているからだと説明する。臓器移植法が立法されるときでも「脳死は完全は死ではない」と結論された。ならば、なぜ死んでもいない者の臓器を移植できるのかという疑問がわく。
 脳死を死と定義し、死後は神の元に帰るキリスト教社会では、生と死は明快に境界がある。神の元に渡った魂の亡骸は、人間社会に役立ててよいのだ。儒教、仏教、神道の入り混じった日本では、絶対神による生と死の境界が引かれていなかった。曖昧さの日本は、生命倫理に立ちはだかった。それは、大江健三郎が川端康成の「曖昧さの美学」を批判し、欧米的合理性を追求すべきと論じたことにつながる、と赤林先生は言う。
 同様に、欧米では、受精卵は既に「生命」であり、だからこそ、アメリカの大統領選挙でも中絶賛成派と反対派が争うことになるのだが、日本では、「受精卵は生命の芽」であるとした。生命そのものではない、生命となりうるものであり、生命ほどの重みはないとの解釈である。だから、日本では、中絶は比較的自由に行われている。戦後の優生保護法の立法に伴い、既に子供のいる既婚者が進んで中絶をした。現在でも、望まぬ妊娠は時期さえ間違えなければ中絶できる。日本の曖昧さが、良くも悪くも、戦後のベビーブームを中断したのは歴史的事実である。
 赤林先生は、生命倫理から敷衍して日本社会を語った。白鳳がかつてレフリー(行司)に土俵下でクレームをつけたのは「横綱の風格を汚す」としてすぐさま取り下げざるを得なくなった。欧米では、スポーツマンがレフリーにクレームをつけるのは当然の権利だ。日本の対応は理解されなかった。風格という曖昧なものによって世界のスポーツルールをも変えてしまう。
 今、ロシア侵攻、コロナ禍、世界の経済回復競争の中において、日本は曖昧でシロクロをつけられない立場を通してきた。ロシア・ウクライナは、米国がつけたシロクロに盲従し、コロナはずるずると2類相当の重篤な疾病として世界に稀な対応を続け、経済回復はお隣中国次第になっている。
 言うまでもない、日本の政治の曖昧さが全ての禍をもたらしている。公文書での証拠が厳然として存在しているのに、元総務大臣のクビも取れない野党も曖昧さの責任を負う。施政者は、生命倫理を学習し、政治の曖昧さを払拭する働きをしてみせよ。日本の没落を食い止めるために。
 
 

[2023/02/17]
ジリ貧日本の処方箋



 日本が一人当たりGDP、経済成長率、賃金水準において「先進国最低」であることは、最近になって、すっかり社会に定着した。かつて、欧米もアジア諸国も「なぜ日本は繁栄したのか」「日本の脅威」を声高に叫び、日本は喜んでマスコミの風潮を受け入れていた。
 しかし、日本は負け始めると、なかなか負けを認めないできた。特にアジアの世界で負けを認めることは嫌った。中国が2010年、世界第二の経済大国になったとき、「いつの間にか抜かれた」と反応し、2018年、韓国の賃金水準が日本を抜いたとき「韓国経済は内容を伴わない」とうそぶいてきた。だが、その事実は、継続し、日本は次にどのアジアの国に抜かれるかという状況にある。
 今更の感はあるが、数字で、日本経済の経緯を見よう。56~73年の高度経済成長期の成長率は9.1%、74~90年の安定成長期は4.2%、バブル崩壊後の91~21年は0.7%である。安倍元首相の死去、黒田日銀総裁の引退は、「アベノミクス失敗」の論調を強化しているが、「日韓関係のあるべき姿」の編著者クック・ジュンホ横浜市立大教授によれば、具体的に「経済政策の誤謬と民間の萎縮」が原因という。
 筆者は、これに、政治の貧困と人口政策の不在を加えたい。バブル崩壊以降の先送り、借金政治を作ってきたのは、志の低い世襲政治家たちだ。学問も社会経験も過小なばかりか、選挙だけで人生を送ってきた輩が経済社会のかじ取りをすることは不可能だった。
 高い経済成長は人口ボーナス時期に重なる。日本は世界に先駆けて、団塊世代を中心とする人口ボーナス期を終えた。ちなみに韓国の高度経済成長期は朴正熙大統領就任の63年から97年であり(日本は56~73年)、ベビーブームは朝鮮戦争後の55年から63年(日本は47~49年)で日本よりはるかに長かった。今、韓国がさまざまの数値で日本を抜くのは、当然なのである。文在寅前大統領が日本に対し、強気の姿勢になったのは経済の強みを感じたからである。73年、日本の高度経済成長期の最後の年では、韓国は日本のGDPの十分の一に過ぎなかったころとは比較にならない。
 それでも、日本は韓国の人口の2倍あり、生産性で負けるドイツの1.5倍もある。だから、GDPそのものはこの2国よりも上だ。アジアの国々に負けることを認めたくない日本、一国の人口の少ない欧州に勝ち続けたい日本がやるべきは、30年間の人口政策の失敗をやり直すことだ。アベノミクスの失敗は植田新総裁が是正を図るとしても、人口政策の失敗の是正はまさに総理大臣の仕事だろう。
 政治改革と人口問題への取り組みが必至だ。

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