元衆議院議員(茨城県第6区)[無所属]大泉ひろ子オフィシャルサイト -大泉ひろこの徒然草(つれづれぐさ)-
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日々雑感
[2018/08/11]
地球の裏側から



 国連NGO団体の御厚誼で、ブラジル・サンパウロに行く機会を得た。サンパウロは2002年、サンパウロ大学のシンポジウムに招かれて以来、16年ぶりである。
 16年前、在日の日系ブラジル人の年金掛け捨て問題がテーマで、日系人に優先的労働ビザを発した日本政府が、日系ブラジル人の年金掛け捨てを看過しているのをブラジル政府は怒っていた。サンパウロ大学のシンポジウムは激論になった。幸い、日伯年金協定が成立し、筆者が衆議院外務委員会の委員だった2012年に批准された。筆者はこの問題に縁があったのである。
 今回の会合で、筆者はこの問題に触れ、また、第二次世界大戦中、両国は交戦国であり国交断絶もしていたが、これらの過去のわだかまりは解決し、互いに友好関係にあることをスピーチした。もうひとつ、昨年の国連女性の地位委員会のモニタリングに参加し、日本もブラジルもGEM、即ち、女性の社会進出が遅れている事実を改めて認識したことも付け加えた。日本とブラジルの知られざる共通点である。
 今世紀初頭からBRICSと言われ、ブラジルは目覚ましく発展を続けてきたが、周知のとおり、前大統領の弾劾、経済の低迷で、現在は苦境にある。10月には大統領選挙を控えているが、予測を阻むほど混迷している。しかし、ブラジルはたくましい。同じ資源国オーストラリアなどと違って、航空機や自動車産業など工業国として発展している。自国生産のトウモロコシを使ったエタノール入りガソリンを使うなど、世界に先駆けた技術も持つ。
 ブラジルの発展に尽くしてきたのが1908年に始まる日系移民である。日系人はあらゆる分野で活躍し、敬意を持たれている。その日系人が造ったサンパウロ病院は日本製医療機器の導入を優先し、日本から学んだ衛生管理の行き届いた綺麗な病院である。社会保険制度は日本のように完備していないが、医療チームが常勤ではなく、ローテーションを組んでさまざまの病院を回ることにより、医師不足の解消に努めている。
 病院長に、「ブラジル人の死因は何ですか」と聞いたら、勿論、癌や心疾患や肺炎なのだが、病院長はおどけて、「殺人です」と答えた。麻薬組織の関連で殺人が増えているブラジルの実態である。
 BRICSの国々はそれぞれ問題を抱えているが、ブラジルは、ラテンアメリカ一の経済力と人口を持つ、ラテンアメリカの星である。世界をリードしていく可能性も秘めている。ロシアもインドも中国も日本に近いが、時差12時間、まさに夜昼逆の、地球の裏側にあるブラジルに親しみと期待を抱いた機会であった。

[2018/07/30]
安倍政権と官僚・天皇



 文科省の行政が停滞している。言うまでもなく、重なる幹部の逮捕である。司法の裁きがあるまでは、「だから、文部省は・・」というのは早い。
 文科省や厚労省のような非経済官庁は、経済官庁と違って、なべて人材はおとなしく、仕事も私生活も慎重である。出来そうもないことにもチャレンジする経産省や政治家を掌にのせる財務省のようなダイナミズムはない。
 しかし、文科省(旧文部省)は2001年、科学技術庁を合併してから変化していると思う。理系の技官の存在によって、仕事が精緻になり、前向きの姿勢が見える。(従来、そうでなかったわけだ)。イノベーションが日本の存亡にかかわるようになり、科研費の拡大・配分を担う文科省の役割が大きくなったのである。
 科研費と直接関係はないが、文科省が最近始めた「訪問型家庭教育支援」は、従来学校教育と家庭教育に境界線を引いていた文科省が積極姿勢に変わり、地域や家庭に出ていくことを決意した事業である。教員OBばかりでなく、保健所や児童相談所などの厚労省のインフラも使い、虐待などの今日的課題に、文科省が乗り出す。
 これからは、少子化対策も、産む性の教育、教育無償化など文科省の役割は厚労省よりも大きくなると思われる。「いよいよ文科省の時代」という矢先の幹部の逮捕。文科省課長級40人が自ら改革を図ろうとする動きもあるそうだが、必要あれば、政治とも闘わねばならない。森友・加計でもつまづき、全てが官僚の矜持崩壊ゆえと国民に解されぬよう、勇気を出してほしい。
 最近は、安倍一強の下で、政権に対抗できる人は少なくなった。学者も然り、である。民主党時代の御用学者は、民主党に呆れて離れてしまった。その中で、最近、「国体論」(集英社新書)を著した白井聡先生(京都精華大学)はすごい。4月刊行で既に7万部となるこの著書は、前著「永続的敗戦論」に書いた、今日まで続く対米従属論の続編である。
 この中で、面白いのは、2016年8月の天皇辞意の「お言葉」を、終戦を導いた「玉音放送」に匹敵する今上天皇の意思表明と解し、暗に今上天皇が「マッカサーが昭和天皇の上にいたように、日本国民統合の象徴は私ではなく、アメリカだ」という趣旨を内包していると言う。しかも、このお言葉は安倍首相にとって「不意打ち」だったのである。
 お言葉は、完全に天皇の私的な言葉ではありえなく、国事行為に準ずるものだから、内閣の助言と承認に基づいて行わねばならない。もし、不意打ちならば、お言葉そのものが憲法違反になってしまう。天皇はそこまで覚悟して発言したと白井先生は言う。
 白井先生は若くて頭の回転が速く、清々しいお方だが、舌鋒は鋭い。安倍政権は、弱すぎる野党と、総裁選を降りた宏池会のような優柔不断の自民党によって支えられている。しかし、天皇や官僚をもっと大切にしたほうが良いのではないか。筆者が安倍首相に提言するようなことではあるまいが。

[2018/07/18]
成育基本法ーもうひとつの少子化対策



 昨日、日本小児科医会名誉会長の松平隆光先生のお話を聴く機会を得た。先生は来年の通常国会での成立を望む成育基本法に期待をかけている。
 もう10年以上も前から、医師会等を中心に小児保健法の検討が行われ、途中から、「胎児から成人まで」という発想から成育基本法と名を変えて、子供の医療を中心とした一貫した育みを目指してきた。昨今の乳幼児虐待死や子供の貧困問題など社会問題の解決に新たな政策集中を図る内容である。
 いわば、少子化政策は人口政策として、子供を量的に捉える課題だが、少ない子供を一人残らず立派に育てるための「質的な課題」に取り組むのが成育基本法である。その目的は、国、地方公共団体、医療関係者の責務を明らかにし、成育過程にある者の保健、医療及び福祉施策を総合的に行うというものである。
 基本法だから抽象的だが、生命・健康教育、子育て支援体制、周産期医療の充実など成育基本計画を策定して、目標値に到達していくことを狙う。
 では、具体的に何が問題なのか。筆者が厚生省で児童行政に携わっていた頃、問題の一つとして、学校保健法が文部省(当時)の所管で、子育て政策を一貫してできない縦割りの壁にぶつかった。子供の糖尿病や、中学3年生の女子のダイエットなどが統計上認知されても、取り組みの場がほとんど教育現場に限られるため、厚生省からの関与が限られていた。成育基本法の成立によって保健所や医療機関の取り組みを強化することが望まれよう。
 子宮頸がんワクチンの問題も、なぜ中学3年生の女子が対象なのか、副作用は本当にないのか、「産む性」を守る教育も施すべき中、ワクチンの早期取り組みだけを行う意味は何なのか、十分な議論が行われたとは言えない。厚労省と文科省の連携が不十分である。これも、成育基本法の成立によって、国の責任の明確化のところで解決していくべきである。ということは、今の成育基本法案に欠けているのは、医療と教育の連携であり、文科省をもっと巻き込まねば、厚労省だけの「基本理念」、またぞろ「お経」だけで終わってしまう可能性がある。
 責務を国、地方公共団体だけでなく、医療関係者に負わせるのは大きな前進である。例えば、生まれた子供の低体重の問題がある。出生児平均体重は、1975年の3200グラムから、2012年の2950グラムまで落ちた。これは、やせ形の女性が増え、高齢出産が増え、さらに低体重で生存が可能になったから、というよりは、むしろ医療供給者側で「小さく生んで大きく育てる」を強調し、妊婦の体重管理を厳密に行い、難産になりやすい大きな赤ん坊を避けたのが原因ではないかと思われる。
 同様に、統計学的に有意なまでに帝王切開が増えているが、これも、難産を避ける医療供給側の原因が大きいと思われる。難産で障害を負った場合、訴訟になりやすく、医療供給側でそれを避けようとするのは責められないし、産科医がそれゆえに減っているのも、別の手立てを考えねばならない。少子化は家庭の中でも進み、子供がたくさんいれば障碍児も受け入れられたが、数限られた子供の場合には、許容範囲が狭まり、いきおい訴訟へと向かうことになる。これも少子社会の現実だ。
 成育基本法は、マクロでばかりとらえられてきた少子化をミクロの視点で、質的向上を目的とする、その理念は優れている。しかし、以上のほんのいくつかの問題に解答が出せるほどの具体性はない。医師会など業界から発想したことは奇特だと思うが、他方、民主党政権時代は議論が止まり、医師会が政党として自民党を選んで立法しようとしているのはいささか気になる。今の野党では話にならないと言うのは分かるが、結果的に医療供給側保護に回らぬよう、また、医療・福祉関係者の好きな、フィンランドの子育て制度など北欧の例が神格化されぬよう願いたい。もっと万機公論に決すべき少子化の課題である。

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