元衆議院議員(茨城県第6区)[無所属]大泉ひろ子オフィシャルサイト -大泉ひろこの徒然草(つれづれぐさ)-
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日々雑感
[2021/02/20]
子育て政策に科学を




 「ヒトの発達の謎を解く」の著者である明和政子京大大学院教授のお話を聴く機会を得た。この欄で以前紹介した山極寿一元京大総長と同じく京大霊長類研究所で、チンパンジーとヒトの違いからヒトの発達を研究し、子育ての科学で大きな発言力を持つのが明和先生である。
 チンパンジーは6ー7年かけて子供を一頭づつ大人にしてから、次の子供を産むように仕組まれている。ヒトはそもそも子供を超未熟児として生み、成長までの時間が長い上に、未熟児を抱えたまま次の子供を産む。これは、ヒトが母親だけではなく、「共同養育」により生存、進化してきたからであると先生は説く。
 共同養育を生物学的に運命づけられているにもかかわらず、人間社会では長らく「子供は母親が育てるもの」である文化を作り上げてきた。筆者が90年代半ばに厚生省で児童行政に携わっていたころ、「子供は3歳まで母親が育てねばならない」三歳児神話や「保育所育ちは幼稚園児に劣る」という根拠のない意見が世の中で支配的であり、行政も、保育所の整備に及び腰だった。
 しかし、少子化対策の要として保育所が位置付けられてからは、女性の社会進出やデフレによる共働きの必然が状況を変えてきた。いつの間にか保育園児の数は幼稚園児を抜き、保育所に入れないことが「保育所落ちた。日本死ね」というほどの問題にまで達するようになった。保育所は一定の地位を得たのである。
 この事実は喜べない。明和先生の言う「共同養育」こそが本来の子育てであるという発想が受け容れられたわけではなく、少子社会と生産年齢人口の減少という背景から、女性の労働力をバックアップする形で、子育ての省力化、利便化を図ろうとしたのが近年の保育所の発展にすぎないからである。
 90年代半ば、少子化政策が始まったころに明和先生の研究成果が出ていれば、「量的に増やせばいい」という政策の在り方は違っていただろう。母親が労働市場にいようがいまいが、共同養育の施設として全ての子を対象に、専門性を高めた施設の在り方が求められてきたはずである。
 母親が産後うつやヒステリーになるのは誰にでも起きる現象であり、それを抑制できるのは共同養育者の存在である。父親はもちろんだが「イクメン対策」は徐に改善するにとどまり、祖父母、保育士のみならず、もっと様々なボランティアを含む社会資源を政府主導で制度化すべきである。
 脳科学や心理学から既に多くの指摘が出ているように、なべて乳幼児期に信頼できる養育者が複数いる子供は青春期の不安定を乗り越えやすい。また、明和先生の指摘によれば、ヒトは15歳くらいで性的成熟を遂げるが、脳が成熟するのは25歳くらいであるとのこと。社会は、法制度的にではなく、生物学的に真実に成熟できるまで「共同養育」の立場で若者を見守っていく必要があると考える。
 医療の現場ではEBM(Evidence Based Medicine)が注目されているが、教育、福祉の現場では遠い先のことのようだ。政策立案者も統計だけではなく、ましてや政治家の思い付きを忖度するのではなく、科学的な政策策定に向かわねばなるまい。少子化政策と子育て政策に求められるのは、今まさに科学である。


 

[2021/01/16]
北極の夢




 コロナで再び「鎖国」と「自粛」の体制に入る中、国内外の重要課題は置き去りにされた感がある。その一つが地球温暖化であろう。その温暖化の象徴が、いつも映像に現れる北極の氷の崩落だ。
 此度、北極研究で知られる山口一東大大学院教授のお話を聴く機会を得た。山口教授は長年にわたって北極の海氷域面積の縮小を研究してこられた。北極は、温暖化の象徴以上に、科学の研究対象の宝庫であり、産業振興や災害政策にもつながる重要な課題を抱えることを知った。
 温暖化による解氷は、ロシア側とカナダ側の北極海航路を開き、アジアと欧州間、アジアと北米東海岸の距離を3ー4割減することができた。輸送などの経済効果を生み、かつ資源開発の可能性も大にしたのである。北極海航路が政治的に安定しているならば、スエズ運河やパナマ運河を利用するよりもはるかに安価になる。
 ただし、北極は南極とは異なり、大陸ではなく、海であるので南極条約のような平和利用のための国際条約がない。国連海洋法条約が適用されるが、課題はロシアやカナダの内水を通過するため、その利権が考慮されねばならない。運航や開発が自由にできるというものではない。
 かつては、日本からの欧州便はソ連の上空を飛行できないため、アラスカ経由で北極の上を飛んだ記憶がある。現在は欧州はみなロシア上空を通って直行便で行けるようになり、時間が短縮した。北極海航路も自由主義議国にとってはカナダの方が使いやすいそうであるが、北方領土返還を含め、ロシアとの友好はここでも必要になってくる。
 日本は、ノルウェー、ロシアと協力して北極海航路の研究を行ってきたが、近年では、北極の経済性を認識して、中国や韓国も日本を真似ようとしている。特に中国は、経済力と科学への投資に力を入れていることから、北極海航路を一帯一路に含め氷のシルクロードと呼んで積極的に開発参入を狙っている。
 北極における日本の解氷予測はきわめて正確であり、日本が北極科学をリードする可能性は高いが、ここでもまた予算の制約がある。砕氷機能の付いた北極研究船がようやく予算化された。この船を持たないと船を持つ国と同等に研究ができないそうだ。
 科学者は第一線に出たときに「先進国日本のはずなのに・・」と思わされる場面が多いであろう。必ずしも経済性だけを目指すのではなく、基礎研究にふんだんな予算を組める国になってほしい。カネで中国に負けるのは先達研究国として残念ではないか。コロナ対策も経済政策とのバランスで大きな投資をしなかったのが失策と言われる所以ではないか。
 

[2020/12/20]
WHOよ、日本よ、どうする?



 
 コロナ禍が越年することは明らかになった。欧州では再度のロックダウンが行われ、英米ではワクチンの接種が始まり成果を待つ。日本では、GO TOキャンペーンが批判され一時中止に追い込まれるとともに、政治家の「ルール違反」会食があげつらわれ、相変わらずの混迷ぶりである。

 疫病対策は国ごとに行われ、台湾やシンガポールが称賛されたり、アメリカやスウェーデンが批判されたりしてきた。世界的オピニオンリーダーのユヴァル・ノア・ハラリは、このパンデミックを乗り切る手段として国際協力を主張するものの、世界の動向はそうではない。専ら主権国家の個別な取り組みが競われている。

 そもそも保健衛生の国際協力機関として70余年の歴史を持つWHOは、アメリカがその中国寄りの姿勢を批判して脱退宣言し、バイデン大統領が就任すれば復帰することになっても、果たして、世界の疫病終息のリーダーシップをとれるのかは疑問である。

 WHOはアメリカが脱退して分担金を支払わなくても、アメリカからは分担金とほぼ同額のビル&メリンダ・ゲイツ財団からの寄付が行われている。しかも、WHOは第二次世界大戦中にアメリカが国連加盟国だけではなく非加盟国も含んだ脱連合国の機関として発足させた経緯がある。即ち、WHOの存在にはアメリカの功績が大きい。

 筆者は、80年代、ユニセフのインド事務所に務め、WHOと連携してインドのポリオ予防接種キャンペーンの仕事を担った。WHOが接種対象の子供数の把握方法を確立し、ユニセフはともにその調査を行い、また、コールドチェーンの整備などを行った。国際機関の中で、WHOとユニセフの2機関が際立って現場主義であり、プログラムも予算も自ら作り、いわゆる本部指令型の業務形態とは対照をなしている。

 その後、筆者は厚生省(現・厚労省)に戻り、WHOのジュネーブ総会に出席するようになって驚いた。そこは、政治の場であり、巨大な官僚機構の場であった。80年代末、アメリカはWHOの方針に反対して、脱退し分担金を止めた。アメリカの参加のない総会は、まさに心棒を失った会議であり、全世界に国境のない保健衛生を普及させるには、大国の力、いや、アメリカの力が必要であることを痛感した。なぜなら、専門家集団の送り込みも医薬品の開発力も、アメリカがダントツだからである。

 WHOのテドロス事務局長はマラリアの研究者でありエチオピアの保健大臣と外務大臣を務めた政治家でもあるが、アメリカを理解していなかったのではないかと思われる。WHOからの脱退は上述したように、初めてのことでもなければ、トランプ大統領だからでもなく、アメリカは、しばしばユネスコや国連人口基金の脱退もしてきた。

 テドロス氏は、2003年中国でSARSが流行したときに、当時のWHO事務局長グロ・ブルントラント氏が中国の情報隠蔽を批判し、加盟国中国との関係を悪化させたことを特に意識したと言われている。ブルントラント氏は、元ノルウェー首相で、92年リオデジャネイロ開催の地球サミットを成功させた女性である。筆者は直接にお話ししたことがあるが、パワフルで明快そのもの、テドロス氏より少なくとも政治家としては一枚上手のような印象を持つ。

 WHOがコロナ終息に向けて加盟国の行動基準を作ってリードし、開発途上国へのワクチン供給を率先して行えるように、すぐにでも体制を整えねば、今始まったことではないWHOの力不足はさらに下り坂となろう。悲しいかな、日本は、今、WHOどろこではない。保健所を減らしてきた公衆衛生体制を、今後繰り返すであろう疫病対策に向けてどう立て直すのか、層の薄い感染症専門家集団をどう養成するのか、そして疫病を原因にしているがその実、内在的に経済低迷している状況をどう脱するのか、方針は全く見えない。
 

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