元衆議院議員(茨城県第6区)[無所属]大泉ひろ子オフィシャルサイト -大泉ひろこの徒然草(つれづれぐさ)-
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日々雑感
[2020/01/22]
日本を救う科学技術政策



 総理の施政方針演説が行われた。内容は、東京オリンピックをイントロに、全世代型社会保障と外交が中心である。野党は、総理の主張する「業績」やIR汚職、疑惑の「桜を見る会」などに批判を集中させるであろうが、しかし、もっと、基本的なところに着目してほしいのだ。
 
 それは、科学技術政策を施政の柱として挙げていないことだ。イノベーションやソサイエティ5.0などのキーワードは入っているが、政策の幹が示されていない。全世代型社会保障の足枷が人口構造であり、経済停滞を覆す手段はイノベーションである。その課題に応えるのが科学技術ではないのか。外交においても、総理が古顔になって若干の存在感を表すようになったとしても、最早、国際社会において日本は科学技術立国としての尊敬は集めていないのである。近視眼的な課題に取り組む以上に、日本の未来に向かっての科学技術政策が語られないのは、日本の落ち目の始まりである。

 政府の第6期科学技術基本計画が2021年4月から始まる。それに向けて第5期のソサイエティ5.0を始めとする評価が行われ、第6期は、縦割り行政の官僚書き集めから、よりトップダウンの政策が掲げられる予定だという(内閣府)。トップダウンと言えば、政治的な判断と解されるが、筆者は危惧を抱く。

 官僚書き集めは、表題をキャッチイに打ち上げても、中身を見れば毎回同じ項目の並べ替えを意味する。自分の関わる仕事を掲載しなければ自分の存在意義が失われてしまう、官僚なら当然の論理だからだ。では、トップダウンの政治判断を良しとするかというと、これも危険である。なぜなら、政治家のこの分野での関心の低さ(かつての尾身幸次元科技庁大臣の言)が、政治家の科学リテラシーの低さにつながっているからである。言うに及ばず、この分野は選挙の票にもならない。
 
 最近、山中伸弥教授のiPS細胞は世界の潮流ではないから研究費を削減するとのニュースが伝えられた。総理補佐官と厚労省審議官の早とちりであり、さすがに山中教授の反論に対し、すぐに取り下げることになった。これは、政府内の科学リテラシーの低さを如実に表すものであり、それ以上に、科学インテグリティ(ポリティカルコレクトネスと同じように、科学的妥当性、科学的公正と考えてよい)を欠いた拙劣な行動である。総理補佐官から出た行動とすれば、背後に官房長官、総理が存在する。

 iPS細胞は、科研費が集中し、そのほかの研究に弊害があると言う議論もある。iPS細胞に対抗するためのステップ細胞にも膨大な費用がかけられ、小保方事件を招いたことは記憶に新しい。しかし、iPS細胞が未来の医療につながり、日本はノーベル賞学者を先頭に世界をリードしているのだ。つまり、これは、日本の夢であり、国益なのだ。

 科学技術施政方針は、学者の弁を書くのではない。国益となる研究を政府が押し上げる仕組みと予算を作るものだ。例えば、素粒子論で先端を行く日本が、ハイパーカミオカンデを建設するのも、国益である。ITやバイオのみならず、得意のものつくりでも国際競争に負けてきた日本が、国益のかかった分野で盛り返す必要がある。

 もうひとつ、重要な国益のかかった分野がある。海洋研究、水産資源研究である。海洋国家日本としては、この分野に大きなメリットがある。海洋研究は、深層海流や海の二酸化炭素吸収力など気候変動の解明に資する。また、深海のエネルギー資源水素の開発、就中、その開発コスト削減も化石燃料に依存する日本の国益をかけた研究になる。

 水産資源の研究もまた、大きな国益のためにある。漁獲量が逓減し、若い人を中心に魚介摂取量が減る中でも、日本は今だ世界一の魚消費国である。捕鯨や稚魚養殖で国際社会における軋轢を持ちつつも、この食文化を守るのが国益でなければ何と言えよう。東シナ海の漁場は、誰もコントロールできないブラックボックスとなっていて、日本はアジア(インドネシアなどで貧困者が魚のタンパクを必要としている)の混沌とした漁場と欧米の科学(捕鯨に関しては、インチキなものもある)をつなぐ役割が期待されている。

 改めて、日本の国益を盛り込んだ科学技術施政方針を打ち上げるべきである。

 

 

[2020/01/04]
謹賀新年



 2020年、明けましておめでとうございます。本年も、当該欄において、少子化、医療、気候変動、政治の危機などをテーマに論陣を張ります。ご高覧頂ければ幸甚です。

 連載「エージングパラドックス」では、老人改造を目したアンチエージングや長寿の方法論とは異なり、老人であって老人らしからぬ逆説的な発想を書きます。

 筆者は正月生まれで、まもなく70歳。1勝4敗という選挙経験は、財産、人的財産を失わせましたが、20歳を迎えた50年前の自分以上に、知識に強欲になり、豊かな知識を持つ寡数の友人と心満たす仕事の機会を得て、徒然なる日々を楽しんでいます。

 読者の皆様の2020年が、変動を予感する日本においてご多幸でありますように、お祈り申し上げます。

[2019/12/18]
アタッチメント



 最近、東大の遠藤利彦教授の話を聞く機会を得た。遠藤教授は、教育学、発達心理学が専門である。筆者は、ここ数年、児童関係の会議で、発達心理学の専門家の話を聞くことが多くなった。もとより、児童福祉行政に携わっていたものの、子供の内面について多くを知らなかった。
 発達心理学の教えるところは、9歳10歳の壁(子供が社会性、道徳性の芽を持つ時期)のように、常識で納得できる現象を実験データで確認するのである。遠藤教授のテーマはアタッチメント(近い翻訳は愛着)であるが、子供は、すがりつく愛着あってこそ、健全な成長を遂げると結論を導く。
 スヌーピーの漫画に出てくる哲学少年ライナスはいつも片手に毛布を持ち、毛布の存在が彼に安心を与えている。毛布は、彼のアタッチメントである。遠藤教授によると、多くの子供はアタッチメントを持ち、成長するにつれ、それを手放す。特別なものがなくても安心感を得られるようになるからである。ただし、2割くらいの子供は、いくつになっても、ぼろぼろになった縫いぐるみ等を手放せない。
 大人になっても、これに近い性癖を持つ人は相当いる。植木鉢に石を3個投げ入れてからでなければ講義を始められない教授、階段を右足から登らなければ、やり直すと言う人、これは、いささか病的ではないかと思われる。
 ライナスの安心毛布は何かを象徴している。親の愛情だろう。自分が愛されている、いつも身近にいて、自分を肯定してくれる人がいる。だから、赤子は、やがて、集団に入り、大人になっていく。アタッチメントとは心の栄養と置き換えられよう。
 アタッチメントに欠いた子供は心身ともに成長が遅れる。背は伸びない、年齢相応の反応をしない。やがて、そのハンディを負ったまま、大人になる。発達心理学において科学的に実証された、このことは、1996年、筆者が厚生省児童家庭局企画課長の時をいやでも思い起こさせる。
 児童福祉法の改正に臨んでいた筆者は、乳児院をなくしたいと考えていた。乳児は原則1歳まで、ただし2歳までは法律上入所可能で、発達が悪いとの理由で事実上4歳まで過ごす子供が多かった。栄養士による食事を十分摂っているにもかかわらず、成長が遅いのだ。ほとんどの時間をベビーベッドで寝かされ、一人一人の要求にこたえられるうような体制は取られていない。まさにアタッチメントに欠いた状況であった。
 結局、筆者の思いは成し遂げられなかったが、現在、厚労省は里親制度に力を入れ始めている(顕著な成果は見えないが)。乳児こそは、身近に、いつも変わらぬアタッチメントを与えてくれる人が必要である。母親とは限らない。安心毛布に当たる人が必要だ。
 少子社会の問題は、結婚しない、子供を持たない傾向を憂えるだけではない。子供を持つに至った人々も周囲の同世代未婚集団の影響を受け、育児を積極的に行うインセンティブに欠ける親が存在する。その氷山の一角が、最近の乳幼児虐待事件である。泣き止まないと床にたたきつけたり、十分な栄養を与えないなどで、いたいけな命が奪われてる。
 その親たちも自分の親からアタッチメントを得てないのではないか。その親たちを先に抱きしめてやるおじいさん、おばあさん、社会が必要なのではないか。アタッチメントを政策化するのは難しい。しかし、社会の安定は、経済政策、安全保障以上に、アタッチメントの最後の砦、家庭を作ることを容易にする政策はできるだろう。なぜそこに思い及ばないのか。閨閥アタッチメントの強いきずなを持った政治家が、アタッチメント失ったばらばらの庶民を支配しているのが、無策の時代日本の現状である。 
 
 

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