元衆議院議員(茨城県第6区)[無所属]大泉ひろ子オフィシャルサイト -大泉ひろこの徒然草(つれづれぐさ)-
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日々雑感
[2019/04/22]
定常型社会とイノベーション



 この欄で「夢人口」を語る広井良典京大教授を紹介したことがあるが、過日、彼の話を直接に聞く機会を得た。広井教授は、厚労省の我が後輩であり、若くして学問の世界に移った経歴の人である。久しぶりに会い、「僕はドロップアウトですから」と謙遜したが、勿論、そんなはずはない。多くの論壇の賞を取り、日本の未来の道を指南する屈指の人材である。

 広井教授は社会保障政策の学究と紹介されるものの、本質は、科学史・科学哲学をベースとし、農耕社会が始まった1万年の歴史の流れを捉え、現代社会の社会保障を論じる稀有な論客である。「夢人口」では、「現実とは脳が見る共通の夢」と言い、未来不確定の子供、認知能力の低下する高齢者はそれぞれ夢を見る集団であると言う。
 
 今回の話は、定常型社会。経済成長を絶対的な目標としなくても、十分な豊かさが実現していく社会と定義する。ホモサピエンスは1万年前に農耕というイノベーションを起こし、それが定常化するにしたがって、4大文明などが発達した。17世紀には産業革命というイノベーションを科学の発展とともにもたらし、資本主義、民主主義の価値を擁した社会に我々は位置する。

 イノベーションは今も我々の社会のキーワードである。AIやバイオ科学に期待がかかる。しかし、広井教授は資本主義は直近の金融資本主義をもって最終駅に行き着いた。市場原理をベースに成長を追い続ける手法は終焉を迎えると警告する。確かに、人口も先進国における減少に始まり、22世紀初頭100億余りで定常化し、成長を支える要素が後退していく。さらに、地球環境の問題は成長の後退に拍車をかける。
 
 もう成長はいいではないか、産業革命後の新たな定常状態が既に出現し、ポスト資本主義社会の構築を待っていると広井教授は説得する。その姿は1972年、ローマクラブが著書「成長の限界」で、食料・エネルギー危機の到来から人口の抑制を叫んだ姿と重なる。ローマクラブをさかのぼる百年も前に、実はJ.S.ミルは同じことを提唱していた。つまり、定常型社会の論は古くて新しい議論なのだ。
 
 一昨年の科学者会議で、筆者はたまたま「成長の限界」の著者デニス・メドウに合う機会を得た。彼の限界論の後に起きたイノベーションで、世界はローマクラブの提唱を反故にした。農業もエネルギーもメドウの予測を打ち砕く発展を遂げたからだ。メドウは「それでも私は今も私の考えが正しいと思う」と言った。筆者は、昔読んで茶色くなった彼の著書にサインをしてもらったが、彼の顔色はなかった。

 ミル、メドウに続いて約50年ぶりに広井教授が定常型社会を提言する。マクロ的な話であるから、ある日突然定常型社会になるのではなく、これからもいくつかのイノベーションを経験しつつ、しかし、定常状態になっていくと考えるべきだろう。その定常型社会をポスト資本主義社会と呼べば、既に五感をもって髣髴と感じられるようになっている。我が国は失われた30年(まさに平成が丸ごと)を経験し、特に国民一人当たりのGDPにおいて国際社会での地位を著しく下げた。20世紀から21世紀にかけて奇跡と言われたアジアの躍進も、我が国を追いかけるように少子高齢社会が始まり、もうそう長くは繁栄の中心ではいられない。

 時期を同じくして、小林剛也財務相地方課室長の財務省が取り組むイノベーションの取り組みについてお話を聞いたが、海外に売れる日本酒の開発など現実的な事業に財政的に関わってくのは賛同すべきと思う。しかし、時代を、世紀を超えてのイノベーションが定常型社会を打ち砕くだけのものになるかどうかはわからない。
 
 ここは、厚労省が誇る広井良典教授のさらなる研究成果に期待しよう。
 
 
 

[2019/04/12]
深層海洋への誘い



 過日の会議で、海洋物理学者の日比谷紀之東大大学院教授のレクを聴いた。それは息を飲み込むほどのファンタジーな内容であった。

 我々が親しんでいる親潮・黒潮などの表層海流の下に、深海を循環する海流があり、月の潮汐によって引き起こされている。その深層海流は、北大西洋からアフリカの南、南極大陸の北を通り、太平洋に出て、回転し、ユーラシア大陸の南を通って、再びアフリカの脇を通って北大西洋に帰る。この行程は1500年かかる。現在太平洋に戻ってきた海流は、前回は日本に仏教が伝来した6世紀ころのものだと言える。

 太平洋で回転するときに寒流から暖流に変わり、過去12万年の気温変化は深層海流の影響であるとの研究結果が出ている。現在気候変動は主に二酸化炭素による温暖ガスで説明されているが、実は長期的に考察すると、深層海流が原因ともなる。深層海流が停止したら、北大西洋の気温は5度以上低下する。つまり、現在の気候変動の科学は100年タームで議論され、1500年タームの話ではない。
 
 地球物理学は46億年の科学であるのに比べれば、1500年は一瞬だが、自然科学の壮大さの前に、10年単位で経済社会を論じる社会科学の理論は、真理探究の学問とは言い難いではないか。

 日比谷先生は、大気で起こる乱気流と同じ深海の乱流の観測を続けている。月の潮汐が駆動する深海の流れに改定の凸凹が乱流を起こす。乱流観測機は一基5千万円で日本では生産されていない。当然のことながら予算には苦労する。

 はやぶさ2の活躍が目覚ましい現在、宇宙の解明や太陽系の成り立ちに日本が直接挑んでいるのは喜ばしい。ならば、深海の物理が地球の未来を示唆する存在であることにも同様に金をかける必要がある。超高齢社会で低速化している日本経済社会では、大きな夢を抱いてはいけないのか。否、学問、イノベーションこそがブレークスルーを見出すであろう。
 
 月の潮汐と関係して、深層海流以外にも、ウナギの養殖への影響を指摘した研究がある。人間のお産も月の重力と関係していると言い伝えられてきたが、今のところ、有意味な研究成果は得られていない。月は太陽と違った形で生命や自然現象に影響していることを改めてファンタジーに感じた。
 

[2019/04/04]
移民法は人口問題を解決するか



 昨年末出入国管理及び難民認定法の改正により、新たに在留資格「特定技能」が設けられ、これを施行するため、4月1日に法務省の外局である出入国在留管理庁がスタートした。出入国在留管理庁在留支援課長に厚労省からの出向で赴任した平嶋氏の話を聞く機会を早速に得た。

 今回の法改正は、労働力不足を補うため、外国人に新たな資格を設けるのであって、恒久的な移民法ではないと安倍首相は何度も繰り返していたが、果たしてそうなるのだろうか。

 失踪問題で社会を騒がせてきた、建設現場や農業に携わる従来の技能実習生は、試験免除で特定技能のカテゴリー1の資格が得られ、職種の範囲は狭いがより熟練した場合には、家族帯同も許されるカテゴリー2に進むことができる。
 
 これまでいわば政府開発援助の発想により、日本の技能を学ばせるという考え方で行われてきた技能実習生は、労働のために入国する地位を与えられることになる。もしかしたら、低賃金や過酷な労働から労働法が守ってくれることが期待できるかもしれない。しかし、それは、上記管理庁がどれだけ関与できるかによる。従来は内外の民間斡旋業者に任せっきりだった。

 筆者は、この移民法(改正という形で行われ、重要な法律なのに呼び名が決まっていないから、あえて、こう呼ぶ)は、別の観点から、20年以上にわたる少子化政策の失敗によるものとみている。もう人口が増える兆しは見られない、だから、アメリカやドイツのように、労働力を外から調達する手段を合法化したのだ。

 しかし、技能実修生は技能と日本語の試験を免除されることから、実態は初めから単純労働を想定していることは明らかだ。母国より賃金の高い日本で、稼いで帰ることが目されている。だが、母国の賃金が上がってきた中国やブラジルの入国は減ってきている。今では、ベトナムやネパールなどが多いが、いずれ母国と日本の賃金格差が縮まれば、「稼いで帰る」メリットは低下する。
 
 現に安倍総理は「5年間に34万5千人の入国を予定しているが、人材が不要になったらやめる」とまで発言している。なるほど、あからさまに日本の社会のための都合で作られた法律である。しかし、そこは、人間は生身、どんな事態が待っているかわからない。特定技能カテゴリー2に上がるのは極めて難しいが、もし、日本にとどまりたいと思えば、あらゆる手段を使うであろう。
 
 筆者がアメリカに滞在した1970年代は、多くの偽装結婚があり、アメリカのグリーンカードを手にしようとした移民が後を絶たなかった。いくらトランプ大統領が国境に壁を作っても、人間の知恵は壁を超える。しかし、忘れてはならない、アメリカもそしてドイツも時々お荷物になる移民によってこそ発展してきたのだ。日本もいよいよその必要性ができてきたのではないか。
 
 ならば、入国及び在留条件を緩和してはどうか。少子化政策の失敗を埋めるのであれば、定住定着のために施策を講じたほうが良いのではないか。もちろん、既に地域住民と外国人は多くの軋轢を生んでいる。また、ブラジル人コミューニティーなど日本社会に溶け込まない状況が生み出されている。

 しかし、保育所改革など実際には人口増加につながらない少子化政策を飽きもせずやってきた政府がこれまでタブーだった移民政策に舵を切ったならば、外国人定住化政策とセットで行わねばならないのではないか。人権という観点以上に必要性という観点から、移民法の発展を願いたい。

 

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