元衆議院議員(茨城県第6区)[無所属]大泉ひろ子オフィシャルサイト -大泉ひろこの徒然草(つれづれぐさ)-
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日々雑感
[2022/11/25]
「西洋事情」離れ



 幕末、福沢諭吉が書いた「西洋事情」は今風に言えばベストセラーだった。欧米文化を見聞きしたリアリティが書かれている。明治以降、お雇い外国人によって学問が、鹿鳴館時代には西洋文化が、西洋の列強に仲間入りしたい日本の治世にとって必須になった。
 時代下って戦後のアメリカ統治支配によって、制度や文化は著しくアメリカ流になった。その戦後の第二波とも言えるのが、中曽根レーガン時代に始まり小泉政権でピークを迎えたアメリカによる日本支配の強要だ。経済社会はアメリカ流を以て最も近代的とされ、市場原理が制度に仕組まれた。金融ビッグバン然り、外資の参入然り、果ては、固有であるべき社会保障の分野も、福祉の措置制度(行政処分)から契約制度への変換に至った。
 アメリカは世界一強の立場が危うくなると、トランプ・バイデン両大統領共に安全保障における日本の役割強化を望むようになった。安倍首相はトランプによく応え、日米の集団安全保障を実現する道を開き、岸田首相は、日本の防衛費二倍を目指す。これらはあたかも日本が自発的に必要性を認めて施政に持ち込まれたようになっている。
 開き直れば、それは時々の政府の方針だから、いいと言えばいい。ただ、制度の背後にある独自の価値と文化は日本国民をして戸惑わせる結果をまねく。ロシア・ウクライナ戦争は民主主義陣営対専制主義陣営と報道されるが、ならば、なぜASEANもアフリカもイスラム圏も民主主義に与しないのか。「西洋」から来た民主主義には昨今、疑問が付されている。
 前回この欄で紹介したジェンダーやLGBTQもWeirdつまり「西洋」から来たものだが、日本ではジェンダーギャップは治まらず、LGBTQは西洋のような理解は進まない。それが先進性を表す指標だと言われても、底辺を流れる価値や文化が邪魔をするのだ。
 前提が長くなったが、今回の執筆の意図は、WEBでオープンアクセスできる赤林朗東大大学院教授の「Bioethics across the globe」(世界をめぐる生命倫理学)を紹介したかったのである。筆者が近年読んだ本の中でも最も感動した本の一つである。先生は、人間の尊厳と人権をベースにした欧米のモラル(特にそれをリードするアメリカのモラル)は必ずしも日本特有のモラルに当てはまらないと説く。
 97年に議員立法でできた臓器移植法は今日に至っても欧米のような移植に関する医学的医療的発展を望めない。臓器移植やターミナルケアの決定において、日本は家族アプローチをとる国であり、アメリカでは個人が決める孫、親友、医療者など第一人者アプローチが望まれる。日本では個人の自主性が低く、家族関係が良くない場合には判断に齟齬が起きる。
 赤林先生は川端康成を引用して日本人の曖昧さを指摘し、受精卵については「生命」であるかどうかが欧米での問題であるのに対し、日本は「生命の芽」という表現で、議論をそらしたと言う。同時に、アメリカでは大問題であり政治も左右する中絶については、日本は受精卵の扱いよりも淡白である。この曖昧さは日本独自のものである。
 医療の類似で多くの議論も先生は提示し、かつて白鵬が行司の差配に抗議した例を引いて、テニスなど欧米のスポーツでは審判に抗議できるのに、「国技」の文化はそれを許さなかったことを示した。ドナルド・キーンは日本人の従順さに警告し「もっと政府を批判せよ」と叫び、「五体満足」に大きな価値を置いて障害やLGBTQなどに想像たくましくする発想がないことを先生は指摘する。
 日本人は村社会を作っているわけだが、その価値と文化は変りようがない。いいとか悪いとかいう問題ではなく、世界のスタンダード、とりわけ生命倫理の基準を考える時には、日本文化を包摂する必要があり、むやみの「西洋事情」採択に警鐘を鳴らすのが、先生の著作である。
 日本はガラパゴス島であり、結果平等の国でもあり、これからの医療の中心になると言われるプレシジョンメディシン(精密医療)では、認可されていない医薬品の使用も含め、患者の自主性を求められる時に、対応できない社会なのではないか。赤林先生は危惧するのではなく、政治家の手におえない生命倫理を社会で議論すべきと訴えておられる。
 「西洋事情」は、日本だけでなく世界のあらゆるところで離れていく人々を見かける時代の到来である。
 
 

[2022/11/17]
父親の子育て文化



 北欧は日本のはるか先を行く。1980年、コペンハーゲンでは、ミンクのコートを着た老人が街を出歩き消費者の代表であることを裏付けていた(当時の年金は高かった)。2006年、ストックホルムの街でベビーカーを押して歩くのは殆どが男性だった。
 日本は、欧米型先進国になって久しいが、ジェンダーギャップは世界120位、男性の子育ては増えたとはいえ、どの調査を見ても、育児休業の取得率や家事分担率は極めて低い。これを嘆いても無駄だ。筆者は日本の男性の家事育児に関する認識は古来からの文化が作用していると思うからだ。
 遠藤利彦東大大学院教授のお話を聞く機会を得、先生は、欧米の「男性も家事育児に参加すべき」という考えはweirdと言われると教えてくださった。この言葉は筆者が若い頃米国留学中によく聞いた言葉で「変な奴」「変よ」という文脈で使われていた。しかし、この言葉の語源は「運命」から来ていて、そもそも運命をつかさどるという意味だった。シェイクスピアが使ったという。
 すなわち、男性の家事育児への関りは欧米文化の発想(運命)であって、いち早く先進国になった欧米文化を押し頂く国々としてはそれに追随することが当たり前とされているのである。現今、民主主義という欧米で発達した思想に疑問が抱かれているように、男性の家事育児参加が普遍的なものかと言えばそうではないことに気付く。
 日本は古来、通婚社会で母系社会であった。したがって父親不在は当たり前の社会が長かったのだ。父親に家事育児を期待しない文化を形成してきた。ただし、遠藤先生は、戦後の欧米流の核家族化と専業主婦の登場で、父親の家事育児の必要性が高まり、日本独自の文化に抗しても社会が要求するようになったと諭す。また、江戸時代の文献などからは今よりも父親の子育ては一般的だったとの反証も挙げ、高度経済成長が極端にまで父親不在を一般化したと語る。
 戦後の高度経済成長が作った徹底的な「男性不在の核家族」は、文化的背景にとらわれながら、男女共同参画も父親の子育て参加も抵抗し続け、おそらくは何十年経っても改善をみることはあるまい。むしろ、遠藤先生は、調査によれば、子育ての貢献度は、父親よりも、祖母、そして年長の子供の方が大きいと指摘する。
 遠藤先生の研究は我々の一般的感覚と一致する。政策に反映させるならば、「祖母を使え」「兄弟姉妹をつくれ」ということになろう。子供は母親とは別のこうした存在を個別に受け止め大事にするという。必ずしも母親が圧倒していてほかの存在が小さいのではない。言い換えれば、複数のアタッチメントを以て成長していく。
 兄弟姉妹の地位には保育士や学校教師も該当する。子供にとってケアギバーもアタッチメントの対象となり、成長を促す。それは、ともすれば父親の存在よりも大きい。父親が日本文化の殻を破れないのであれば、他のアタッチメントを増やせばいい。
 この議論はフェミニストから攻撃されやすいが、しかし、父親や祖父の役割は青春期に大きいと思われる。人生の選択、歴史の理解、社会規範などは大いに関われる内容である。生物界でも、ライオンは餌をとるのも子育てするのも皆メスで、オスは群れの覇権争いや外部からの攻撃に立ち向かう。
 今は亡き精神医学者の頼藤和寛が書いた本に「川に溺れた子供を、女性は自分の子なら助けるが、男性は他人の子でも助ける」とあった。女性は自分の子を守り、男性は種を守るのが宿命なのだという。フェミニストには腹立たしい議論かもしれないが、日本が欧米流weirdの基準に永遠に当てはまらないことは認めざるを得ない。
 

[2022/10/28]
岸田首相は戦う相手を間違っている



 支持率が下がり、答弁が迷走し、山際大臣の更迭が遅きに失し・・岸田首相はまるで手負いのオオカミのようだ。1993年、宏池会の先輩宮沢喜一元首相が自民党に裏切られ引きずり降ろされたように、岸田首相にも同じことが起こりうる。見識を問わず、どんぐりの背比べの中で首相を選ぶ自民党だからこそだ。
 岸田首相が起死回生するとすれば、むしろその自民党と戦うべきなのだ。安倍一強の自民党が永続するという誤解が、国葬を決意し、保守系をなだめる人事を行い、統一教会問題の泥沼にはまった。
 宏池会創設者の池田勇人のように、岸信介の実は嫌米・右翼政治を封じ込め、経済成長に全身全霊を捧げる政治をやるべきだ。補正予算29.1兆円は、目先の常套手段バラマキばかりが目立ち、大きな柱が見えてこない。さては、所得(投資)倍増も、新しい資本主義も捨てたか。
 岸田首相がやるべきは安倍政治の否定でなければならない。日本が経済成長できないことも、宗教問題も、すべて安倍政治の遺産であり、失政をすべて安倍元首相のせいにして出直すのだ。小泉純一郎が「自民党をぶっ壊す」と言って、首相の座を勝ち取ったことを思い起こせ。
 フルシチョフがスターリンを批判したように、ケ小平が毛沢東を批判したように、高らかに安倍批判を叫び、現今の格差問題と将来人材のための高等教育改革に取り組むべきだ。世襲セレブで学問軽視の安倍政治ではできなかった課題だ。教育を除外したこども家庭庁など要らないから、代わりに老人庁をつくって、高齢者の多くを生産年齢人口側に取り込むこともすべきだ。
 なぜ新たな道を示さずに、相変わらずの小変政治にこだわるのか。なぜ新たな人材を内閣に送りこまず、党内保守系配慮に拘泥するのか。山際大臣も、実は山口大卒で長州政治のバリエーションではなかったか。
 岸田首相よ、安倍の背後霊と戦え。正面の国民は岸田辞めろとささやき、野党を代表して追悼演説した野田元首相は「本当は安倍さんのようになりたかった」を平明で演説上手を活かし訴えた。つまり、野党も安倍の背後霊と戦う力はなく、鼻声でより弱気存在に見えるあなたを代わりに消そうとしている。

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