元衆議院議員(茨城県第6区)[無所属]大泉ひろ子オフィシャルサイト -大泉ひろこの徒然草(つれづれぐさ)-
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日々雑感
[2022/08/11]
自民党の運命は鎌倉殿



 久しぶりに見る大河ドラマである。鎌倉殿13人は、脚本家三谷幸喜氏の才能躍如により、現代政治につながる面白さを伝える。
 頼家と実朝は源頼朝嫡出の長男・次男である。二人ともいわば現代流の世襲政治家である。18歳で武士の棟梁鎌倉殿に就いた頼家は、父の壮絶な人生を真似ようにも経験不足な上、周囲をないがしろにして、終局は外戚北条氏によって暗殺される。
 次男実朝は12歳で鎌倉殿になり、政治は任されず、歌に耽る。名歌を遺したものの、甥の公暁に暗殺される。源氏の支配は三代で終わり、北条の執権政治が続く。これを現代に当てはめれば、世襲政治家が政府を追われるドラマである。
 頼家は安倍晋三である。岸信介が子々孫々のために築いた政治家業と巨大な政治資金を受け継いだ安倍はひたすら岸の遺言を実行しようと努めた。しかし、頭脳明晰かつ満州の妖怪と言われた策士である祖父に遠く及ばず、凶弾に倒れた。
 実朝は岸田文雄である。三代続く世襲政治家であり、宮澤喜一の甥である彼は、ジェントルマンである。歌を詠むほどの文化人ではないが、安倍よりはいささか勉強している。安倍暗殺事件に恐れおののいたか、国葬を決め、内閣改造でも安倍派への配慮を明確に示した。
 退屈極まりない派閥均衡新内閣の上に、新しい資本主義のキーワードのかけらもない施政ぶりで、岸田政権は支持率を落としている。政策集団であった岸田率いる宏池会は死に絶えたようである。ウクライナ戦争後の、コロナ後の日本をどうするのか不明であり、いつどこから公暁なる刺客が現れてもおかしくはない。
 世界はインフレと気候変動への対処を迫られ、核戦争への恐怖をあおられている。頼家・実朝が如き世襲政治家の器量で乗り切れる状況ではあるまい。今年は、世襲政治の終わりの始まりを示唆する年である。同時に、世襲政治を産んできた長州足軽政治の終焉でもある。
 しかし、野党に期待はできない。野党は御家人株を買いたがる農民でしかない。武士の華々しさに憧れ、万年野党で高額所得さえ維持できれば良しとする輩ばかりなのだ。自民党よ、今こそ世襲を排除し、150年続く長州足軽政治から脱却し、真実の保守を学べ。自害した西部邁の本でも読むがいい。
 筆者の勝手な解釈だが、脚本家三谷幸喜はそのメッセージを伝えているように思える。
 

[2022/07/19]
山上徹也容疑者は日本の安重根となるか



 安倍元首相が凶弾に倒れ死亡した事件は日本を震撼させた。あな、恐ろしや、2022年はウクライナ侵攻にとどまらず前代未聞の大事件が又してももたらされる年となった。あたかもコロナ騒ぎで先送りされた気候変動問題が沸騰したかのような情勢である。
 それにしてもマスコミの対応はウクライナ侵攻と同様、金太郎飴であった。ウクライナ侵攻は、今になってようやく単なる「ロシアは悪、ウクライナは善」の構図を打ち破る報道が少しづつ出てきたが、政治家は今もって「気の狂ったプーチンの仕業」と言ってやまない。地政学も歴史も学ばない世襲政治家と自称左翼の烏合の衆だからだ。
 山上容疑者に対しても、プーチンと同じく、宗教への恨みを安倍首相に向けた「気の狂った行動」と最初から位置付けてやまない。しかし、父と兄を自殺で失い貧困に喘いだ当容疑者の情報が少しづつ明らかになってくるとSNS上で若者の同情は集まった。しかも、本人は小児がんで失明した兄や妹に金をもたらそうと保険金をかけて自殺未遂までした状況に追い込まれた人なのである。
 彼はマスコミの言う「狂った人」ではない。報道されている彼の手紙によれば、宗教への恨みを安倍首相に向けたのは社会への影響力の大きさを考えた上であった。もともと頭がよく、論理的に考え、兄妹や、本来ならば一番責められるべき母親への情も厚い人間であったことが明らかになった。抵抗せず、淡々と逮捕されている彼の様子を見ると「仕事をやった」という姿であった。
 この姿は、1909年10月、ハルピン駅で前韓国統監の伊藤博文を銃殺した安重根に重なって見える。安は、今でも、筆者が訪れた釜山の韓国料理店で英雄として崇められた写真や書が飾られているように、一部の韓国人にとっては韓国独立の英雄である。皮肉なことに、翌年処刑され、その年に日韓併合が成立することになった。
 安は両班(支配階級)の出身で、キリスト教の洗礼を受け、受刑中に日本人のファンができるほどの人徳者だった。天皇を尊敬し、そのしもべであるはずの伊藤博文の施政が間違っていると言うスタンスをとった。山上容疑者も、もともとは父は京大工学部卒の豊かな家庭の出身であったが、母の宗教への献金が一家を窮地に陥れた。彼は、むしろ安倍政治に賛意を示していた考えの持ち主であった。したがって、安と山上の二人はよく似ている。
 これが左翼の犯罪であったなら、マスコミは「狂った人扱い」を止めたであろう。漫画程度の理屈で理解されやすいからだ。しかし、深読みすれば、経済的に転落すれば一挙に教育もままならず、自殺も選択肢に入り、生きづらい世の中の立て直しにテロという手段をとるまでに至ってしまったと言える。宗教の責任の背後には政治の責任もあることは否めない。
 岸信介は笹川良一、児玉誉士夫、文鮮明などと反共思想を通じて親しかった。インドネシア賠償についてもデビ夫人を動かして人脈を得たと言われるが、これらの人々と岸の膨大な資産との関連は処々で書かれている。すると、岸の孫であり岸の継承者を自認していた安倍元首相は山上容疑者の標的になってもおかしくはない。無論、許されざる暴挙ではある。
 生きづらい世の中を創った政治、転落の無い数世代に渡る資産を作り続けた世襲の政治家は、少なくとも80年代までの一億総中産階級から転落した多くの日本人にとって「敵」であることを、この機会に永田町で認識すべきである。
 蛇足だが、安重根の死刑執行に当たった関東郡督府の郡督は奇しくも安倍晋三の高祖父である。
 
 
 
 

[2022/06/22]
量から質へ―教育と社会政策



 参院選は国政評価の機会を提供する。これに合わせて岸田内閣の経済政策である「新しい資本主義」と「骨太」が公表された。前者は中長期計画、後者は予算編成方針だが、一般の評価はそこそこである。
 今回は防衛費と物価高が争点になりそうだが、そもそも経済政策はこの30年、つまりバブル崩壊後失敗続きであり、誰も政府の方針を明るく受け止めてはいない。小渕首相の財政出動も、小泉首相の規制緩和も、安倍首相の金融緩和も、結果的には日本経済の復活につながらず、日本は、借金まみれで、消費意欲の低い「貧しい国」に甘んじている。
 経済政策ばかり前面に出ているが、労働力を作る教育や、消費意欲に関わる社会保障・社会政策は、経済政策に内包された責任を持つ分野である。
 教育は、明治以来の義務教育、昨今の高等教育において量的な問題は終っている。日本社会にとって求められる教育の質が問題であり、その質の議論はゆとり教育を始めダッチロールを続け、労働生産性向上につながる結果にならない。また、社会保障・社会政策は今だに量の問題、即ち財政論が中心であり、質の問題にまで到達できない。
 最近、栗原慎二広島大大学院教授のお話で、いじめや不登校など問題を抱える学校の解決に導くケースメソッドを学んだ。岡山県総社市、宮城県石巻市で行われた子供自身の解決能力を使った試みである。生徒、地域、教科以外のプロフェッショナルが参加して自ら解決方法を考え実践する。栗原教授はこの方法をイギリスなどの実践から学んで確立し、見事に成功した。
 筆者の理解では、これは、教師や教育委員会が上に立って解決する「企業のようなやり方」ではなく、いわばゲマインシャフト(情緒的な共同体)を作って、共同体が問題児をそのメンバーとして扱うことにより、健全な日常を取り戻す方法だ。確かに、これまで、企業のようなやり方、即ちゲゼルシャフト的な方法では解決できなかったのであるが、上下関係ではない信頼関係を築くことにより解決に導いたのはうなずける。
 栗原教授によれば、日本の教員は優秀だが、それは教科を教える上で優秀なのであり、学業が優秀であると言うに過ぎない。問題行動に対しては、上から下に教えるのではなく、見守る姿勢が必要である。それができない。ゲゼルシャフトは集団利益を得るための共同体だが、ゲマインシャフトは非合理性はあるものの個人の利益を守る共同体である。
 質の議論に程遠い社会政策の分野においても、民間主導で「ゲマインシャフトづくり」が行われている場合もある。筆者が最近見学した薬物乱用者の民間更生施設では、まさに、治療者が被治療者を治す上下関係をなくし、被治療者同士の交流やマッサージや健康食を口にしながら、穏やかな日々を重ね、当たり前の日常に戻っていく方法をとっている。幸い、費用は企業の社長がすべて寄付しているとのことである。
 これもゲマインシャフトづくりに他ならない。筆者は東京生まれ東京育ちでゲマインシャフトの経験はない。しかし、日本人の圧倒的多数は、地方から都会に出てきた経験者であり、青年に至るまでにゲマインシャフトの経験がある。ゲマインシャフトは一方ではうるさい田舎のしがらみであり、長老の独断的な関りであるかもしれないが、他方で、だれ一人取り残さない包摂社会であることも事実だ。
 都会に出てきて合理的なゲゼルシャフトで心を病み、果てはひきこもり、薬物乱用など非社会的・反社会的行動に至った人々の心を癒すのは、ゲマインシャフト的な集団に置くことだと思われる。
 さて。話は少々飛躍するかもしれないが、経済政策の基礎である消費構造を変えるには、ゲマインシャフトの集団作りが効果あるかもしれない。社会に不安があるために貯金するしかない日本人の行動を劇的に変えるには、その発想が必要である。

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