元衆議院議員(茨城県第6区)[無所属]大泉ひろ子オフィシャルサイト -大泉ひろこの徒然草(つれづれぐさ)-
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日々雑感
[2020/03/18]
人智の限界



 新型コロナウィルスの蔓延予防のため、国境が実質的に閉ざされ、国内の活動が抑制されている。いくつかの経験値や統計上の事実は分ってきても、いかんせんワクチンと特効薬が確立していない。しかし、他方で、重症化は少なく、死亡の多くは高齢者であり、ウィルスの正体を突き止める前に行う予防策が効果的なのかどうかは将来の解明を待つ。
 日本人は真面目だ。公衆衛生に集団として取り組む姿勢が顕著である。電車では、今やスマホ以上の数のマスク姿が見られる。欧米に比べても予防効果を上げているのが数値で明らかである。この真面目さが戦後の結核撲滅につながってきたことを思わずにいられない。今や公衆衛生は医療費削減と連動して、メタボ撲滅などの指導が保健所で行われているが、かつては、厚生省公衆衛生局に臨床経験に優れた医系技官の粋を10人近く集め、結核撲滅に取り組んだ。
 80年代のエイズの時は、同性愛者の疫病という間違った情報で、限られた人の性的感染と楽観視した人も多かったが、今回の飛沫感染は誰にでも起こりうると予防行動に全員が参加する。
 科学的にわかっていないことは実に多い。中国や韓国の大都市で問題になっているPM25(particulate matter 2.5マイクロメートル)という空気中の超微粒子についても解明できていない。先月の筆者が参加した国際会議で、クリフ・デイビッドソン・シラキュース大教授は、空気汚染が神経系、循環器、気管支に与える影響について警告し、子供の学習能力にも影響することをデータで説明した。また、自動車起因の食物、水及び空気に含まれる亜鉛の影響にも言及した。同教授は、解明されていないことが多いと付言した。
 同会議で、ラッタン・ラル・オハイオ州立大教授は、人間と土の関係を紀元前迄遡って歴史的に説明し、現在、土の質が危険にさらされている事実を指摘した。土の汚染については、空気や水に比べ、我々の認識が甘く、知られていないことが多いのに驚いた。
 同じく、この会議において、リュック・モンタニエ教授(2008年ノーベル生理学・医学賞受賞)が、水、食物、及びワクチンに潜む危険を述べ、特にワクチンについては子供に接種するに当たり科学的安全性が確保されていない限り行うべきでないと力説した。パスツール研究所出身で、エイズウィルスの発見者である同教授は、多くのワクチンはむしろ危険性が高いとの認識を示した。
 科学者の専門家の会議でも、人間は「真実」に迫り切れていないことが強調され、我々は分っていないことを前提に政策に踏み出さねばならないことを知らされた。同会議で、マリオ・マリナ・カリフォルニア大教授(95年ノーベル化学賞受賞)は、温暖化の問題などは、最早科学者の手ではなく、責任は社会に移行している、つまり、政治の選択にかかっていると主張した。それにしても、新型コロナウィルスは全世界に経済不況をもたらすかもしれないが、現在の公衆衛生上の政治選択が吉と出るか凶と出るか我々には不明である。

[2020/02/01]
安倍首相はパペット?



 2020年が明け、東京オリンピックが眼前に迫った。しかし、1964年の東京オリンピックの時とは様相が違う。当時は、高度経済成長の真只中、人口は増え、世界2位の経済大国に垂んとするとき、日本の戦後の復興ぶりを世界の人々に見てもらう、その興奮が渦巻いていた。
 
 21世紀に入ってからは、人口規模も世界のGDPに占める割合も、日本は急激な下り坂を下っている。データを見るまでもなく、かつて高品質の代名詞だった日本製品が売れない、有能な日本人と見られていたころの敬意が払われない、そんな日常感覚が普通になりつつある。その中での東京オリンピックだ。エコノミストは祭の後の消費不況を警告してやまない。

 昨今、実体経済が良くなったとは誰も思わない。株価は2012年以来上がっているが、株価は経済の期待値でしかないことは誰もが知るところだ。安倍首相は、第二次安倍内閣以来、経済政策に力点を置き、本心は憲法改正をやりたい気持を抑えて今日まで来た。もう任期余すところでは、本命の憲法改正は無理だ。だとすると、今日までの安倍一強と言われてきた政治は、首相のリーダーシップではなく、むしろ影の誰かによって行われていたのではないか。

 そんな勿体ぶった言い方をするまでもない。安倍首相を取り巻く経産官僚OBの、リフレ経済志向、目先だけのイノベーション志向が首相を傀儡にしてきたのではないか。また、官邸に赴く率が高いのは外務省で、旧来型の親米幹部が首相を傀儡にしてきたのではないか。つまり、長期政権になったのは、リーダーシップよりも傀儡のおかげではないか。

 司法官僚は、そう簡単に憲法改正に動くわけはない。他省庁と異なり、統治機構の礎だからだ。安倍首相は、結局、真実に自分を発揮しないまま長期政権を降りる時が迫ってきた。東京オリンピックという祭の後にかかってくる暗雲を除けることに全力を傾けなければ、山崎卓氏が言うように、安倍首相はレジェンドのない首相として終わってしまうだろう。パぺット(傀儡)総理で終わってしまうであろう。

[2020/01/22]
日本を救う科学技術政策



 総理の施政方針演説が行われた。内容は、東京オリンピックをイントロに、全世代型社会保障と外交が中心である。野党は、総理の主張する「業績」やIR汚職、疑惑の「桜を見る会」などに批判を集中させるであろうが、しかし、もっと、基本的なところに着目してほしいのだ。
 
 それは、科学技術政策を施政の柱として挙げていないことだ。イノベーションやソサイエティ5.0などのキーワードは入っているが、政策の幹が示されていない。全世代型社会保障の足枷が人口構造であり、経済停滞を覆す手段はイノベーションである。その課題に応えるのが科学技術ではないのか。外交においても、総理が古顔になって若干の存在感を表すようになったとしても、最早、国際社会において日本は科学技術立国としての尊敬は集めていないのである。近視眼的な課題に取り組む以上に、日本の未来に向かっての科学技術政策が語られないのは、日本の落ち目の始まりである。

 政府の第6期科学技術基本計画が2021年4月から始まる。それに向けて第5期のソサイエティ5.0を始めとする評価が行われ、第6期は、縦割り行政の官僚書き集めから、よりトップダウンの政策が掲げられる予定だという(内閣府)。トップダウンと言えば、政治的な判断と解されるが、筆者は危惧を抱く。

 官僚書き集めは、表題をキャッチイに打ち上げても、中身を見れば毎回同じ項目の並べ替えを意味する。自分の関わる仕事を掲載しなければ自分の存在意義が失われてしまう、官僚なら当然の論理だからだ。では、トップダウンの政治判断を良しとするかというと、これも危険である。なぜなら、政治家のこの分野での関心の低さ(かつての尾身幸次元科技庁大臣の言)が、政治家の科学リテラシーの低さにつながっているからである。言うに及ばず、この分野は選挙の票にもならない。
 
 最近、山中伸弥教授のiPS細胞は世界の潮流ではないから研究費を削減するとのニュースが伝えられた。総理補佐官と厚労省審議官の早とちりであり、さすがに山中教授の反論に対し、すぐに取り下げることになった。これは、政府内の科学リテラシーの低さを如実に表すものであり、それ以上に、科学インテグリティ(ポリティカルコレクトネスと同じように、科学的妥当性、科学的公正と考えてよい)を欠いた拙劣な行動である。総理補佐官から出た行動とすれば、背後に官房長官、総理が存在する。

 iPS細胞は、科研費が集中し、そのほかの研究に弊害があると言う議論もある。iPS細胞に対抗するためのステップ細胞にも膨大な費用がかけられ、小保方事件を招いたことは記憶に新しい。しかし、iPS細胞が未来の医療につながり、日本はノーベル賞学者を先頭に世界をリードしているのだ。つまり、これは、日本の夢であり、国益なのだ。

 科学技術施政方針は、学者の弁を書くのではない。国益となる研究を政府が押し上げる仕組みと予算を作るものだ。例えば、素粒子論で先端を行く日本が、ハイパーカミオカンデを建設するのも、国益である。ITやバイオのみならず、得意のものつくりでも国際競争に負けてきた日本が、国益のかかった分野で盛り返す必要がある。

 もうひとつ、重要な国益のかかった分野がある。海洋研究、水産資源研究である。海洋国家日本としては、この分野に大きなメリットがある。海洋研究は、深層海流や海の二酸化炭素吸収力など気候変動の解明に資する。また、深海のエネルギー資源水素の開発、就中、その開発コスト削減も化石燃料に依存する日本の国益をかけた研究になる。

 水産資源の研究もまた、大きな国益のためにある。漁獲量が逓減し、若い人を中心に魚介摂取量が減る中でも、日本は今だ世界一の魚消費国である。捕鯨や稚魚養殖で国際社会における軋轢を持ちつつも、この食文化を守るのが国益でなければ何と言えよう。東シナ海の漁場は、誰もコントロールできないブラックボックスとなっていて、日本はアジア(インドネシアなどで貧困者が魚のタンパクを必要としている)の混沌とした漁場と欧米の科学(捕鯨に関しては、インチキなものもある)をつなぐ役割が期待されている。

 改めて、日本の国益を盛り込んだ科学技術施政方針を打ち上げるべきである。

 

 

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