元衆議院議員(茨城県第6区)[無所属]大泉ひろ子オフィシャルサイト -大泉ひろこの徒然草(つれづれぐさ)-
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日々雑感
[2021/01/16]
北極の夢




 コロナで再び「鎖国」と「自粛」の体制に入る中、国内外の重要課題は置き去りにされた感がある。その一つが地球温暖化であろう。その温暖化の象徴が、いつも映像に現れる北極の氷の崩落だ。
 此度、北極研究で知られる山口一東大大学院教授のお話を聴く機会を得た。山口教授は長年にわたって北極の海氷域面積の縮小を研究してこられた。北極は、温暖化の象徴以上に、科学の研究対象の宝庫であり、産業振興や災害政策にもつながる重要な課題を抱えることを知った。
 温暖化による解氷は、ロシア側とカナダ側の北極海航路を開き、アジアと欧州間、アジアと北米東海岸の距離を3ー4割減することができた。輸送などの経済効果を生み、かつ資源開発の可能性も大にしたのである。北極海航路が政治的に安定しているならば、スエズ運河やパナマ運河を利用するよりもはるかに安価になる。
 ただし、北極は南極とは異なり、大陸ではなく、海であるので南極条約のような平和利用のための国際条約がない。国連海洋法条約が適用されるが、課題はロシアやカナダの内水を通過するため、その利権が考慮されねばならない。運航や開発が自由にできるというものではない。
 かつては、日本からの欧州便はソ連の上空を飛行できないため、アラスカ経由で北極の上を飛んだ記憶がある。現在は欧州はみなロシア上空を通って直行便で行けるようになり、時間が短縮した。北極海航路も自由主義議国にとってはカナダの方が使いやすいそうであるが、北方領土返還を含め、ロシアとの友好はここでも必要になってくる。
 日本は、ノルウェー、ロシアと協力して北極海航路の研究を行ってきたが、近年では、北極の経済性を認識して、中国や韓国も日本を真似ようとしている。特に中国は、経済力と科学への投資に力を入れていることから、北極海航路を一帯一路に含め氷のシルクロードと呼んで積極的に開発参入を狙っている。
 北極における日本の解氷予測はきわめて正確であり、日本が北極科学をリードする可能性は高いが、ここでもまた予算の制約がある。砕氷機能の付いた北極研究船がようやく予算化された。この船を持たないと船を持つ国と同等に研究ができないそうだ。
 科学者は第一線に出たときに「先進国日本のはずなのに・・」と思わされる場面が多いであろう。必ずしも経済性だけを目指すのではなく、基礎研究にふんだんな予算を組める国になってほしい。カネで中国に負けるのは先達研究国として残念ではないか。コロナ対策も経済政策とのバランスで大きな投資をしなかったのが失策と言われる所以ではないか。
 

[2020/12/20]
WHOよ、日本よ、どうする?



 
 コロナ禍が越年することは明らかになった。欧州では再度のロックダウンが行われ、英米ではワクチンの接種が始まり成果を待つ。日本では、GO TOキャンペーンが批判され一時中止に追い込まれるとともに、政治家の「ルール違反」会食があげつらわれ、相変わらずの混迷ぶりである。

 疫病対策は国ごとに行われ、台湾やシンガポールが称賛されたり、アメリカやスウェーデンが批判されたりしてきた。世界的オピニオンリーダーのユヴァル・ノア・ハラリは、このパンデミックを乗り切る手段として国際協力を主張するものの、世界の動向はそうではない。専ら主権国家の個別な取り組みが競われている。

 そもそも保健衛生の国際協力機関として70余年の歴史を持つWHOは、アメリカがその中国寄りの姿勢を批判して脱退宣言し、バイデン大統領が就任すれば復帰することになっても、果たして、世界の疫病終息のリーダーシップをとれるのかは疑問である。

 WHOはアメリカが脱退して分担金を支払わなくても、アメリカからは分担金とほぼ同額のビル&メリンダ・ゲイツ財団からの寄付が行われている。しかも、WHOは第二次世界大戦中にアメリカが国連加盟国だけではなく非加盟国も含んだ脱連合国の機関として発足させた経緯がある。即ち、WHOの存在にはアメリカの功績が大きい。

 筆者は、80年代、ユニセフのインド事務所に務め、WHOと連携してインドのポリオ予防接種キャンペーンの仕事を担った。WHOが接種対象の子供数の把握方法を確立し、ユニセフはともにその調査を行い、また、コールドチェーンの整備などを行った。国際機関の中で、WHOとユニセフの2機関が際立って現場主義であり、プログラムも予算も自ら作り、いわゆる本部指令型の業務形態とは対照をなしている。

 その後、筆者は厚生省(現・厚労省)に戻り、WHOのジュネーブ総会に出席するようになって驚いた。そこは、政治の場であり、巨大な官僚機構の場であった。80年代末、アメリカはWHOの方針に反対して、脱退し分担金を止めた。アメリカの参加のない総会は、まさに心棒を失った会議であり、全世界に国境のない保健衛生を普及させるには、大国の力、いや、アメリカの力が必要であることを痛感した。なぜなら、専門家集団の送り込みも医薬品の開発力も、アメリカがダントツだからである。

 WHOのテドロス事務局長はマラリアの研究者でありエチオピアの保健大臣と外務大臣を務めた政治家でもあるが、アメリカを理解していなかったのではないかと思われる。WHOからの脱退は上述したように、初めてのことでもなければ、トランプ大統領だからでもなく、アメリカは、しばしばユネスコや国連人口基金の脱退もしてきた。

 テドロス氏は、2003年中国でSARSが流行したときに、当時のWHO事務局長グロ・ブルントラント氏が中国の情報隠蔽を批判し、加盟国中国との関係を悪化させたことを特に意識したと言われている。ブルントラント氏は、元ノルウェー首相で、92年リオデジャネイロ開催の地球サミットを成功させた女性である。筆者は直接にお話ししたことがあるが、パワフルで明快そのもの、テドロス氏より少なくとも政治家としては一枚上手のような印象を持つ。

 WHOがコロナ終息に向けて加盟国の行動基準を作ってリードし、開発途上国へのワクチン供給を率先して行えるように、すぐにでも体制を整えねば、今始まったことではないWHOの力不足はさらに下り坂となろう。悲しいかな、日本は、今、WHOどろこではない。保健所を減らしてきた公衆衛生体制を、今後繰り返すであろう疫病対策に向けてどう立て直すのか、層の薄い感染症専門家集団をどう養成するのか、そして疫病を原因にしているがその実、内在的に経済低迷している状況をどう脱するのか、方針は全く見えない。
 

[2020/12/02]
恐るべし学術・教育軽視



 日本学術会議の任命拒否問題は収まらない。そこへ安倍元総理の桜を見る会における虚偽発言が浮上し、菅総理の官房長時代の責任も問われている。菅総理の足元は既に崩れ始めた。
 当初の「苦労人である令和おじさん」の好イメージは、周囲やマスコミの「答弁になっていない。分っていない」の論調や、海外からも「輝きがない」と伝えられるなど負のイメージに代わりつつある。従来から、突然の政権継承は好意的にみられることはないのが事実だ。宇野宗佑や森喜朗を思い起こせば、「まぐれで総理になった人」への風当たりは強い。
 なぜまぐれは揶揄されるのか。その政治信条が測りかねるからである。かつて派閥争いの中にあった自民党政治では、派閥内で政策論を交わし、派閥の長は政治目的と識見を明らかにし、総理になる準備を十分整えてからその地位を得た。
 だから、中曽根康弘や加藤紘一の書いた書は読むに値した。どんな政治が行われるか予想できたからである。しかるに、今は、出たとこ勝負、好き嫌い、枝葉末節がそのまま政治になっている。一体、疫病で荒廃しかけているこの国をどう立て直すのか、その中心の柱が見えてこない。否、ないのだ。
 戦後の日本政治は、国際社会に復帰するための吉田茂外交や安保体制の確立をさせた岸信介の政治を除けば、おおむね、経済政策が最重要であった。直近の安倍総理も、憲法改正を強く望みながら、アベノミクス総理の名で終わった。
 この国の基盤となる憲法や学術や教育まで政治の力を及ばせるには、経済政策が成功し、なお余力のある総理でなければできない。歴史的には、中曽根総理は、ロンヤスの日米外交、国鉄民営化の大事業に加え、戦争に行き身近の人間の死を経験した者の思いとして「戦後政治の総決算」を掲げた。(マッカーサーによって作られたと考える)憲法改正を主張した。
 さすがの中曽根総理も自分の代で憲法改正までは難しいと感じていただろうが、憲法の精神を普及させる教育の改革を自分の本命とした。1984年に設置された臨時教育審議会(臨教審)で3年の議論の後、その成果は必ずしも中曽根が狙ったものにはならず、生涯教育や個性の重視という価値を確認した答申になった。したがって、これは中曽根総理の業績に挙げられていない。
 しかし、このことを今思えば、森、安倍、現在の菅総理の衣の下から垣間見える「戦前回帰」を中曽根総理は潔しとしなかったと評価できる。戦友の死を悼みつつも大正デモクラシーに育った大正生まれの中曽根総理の人間性躍如である。
 さて。3度目の補正予算を控え、政府の借金が膨大になる中、飲食業、アパレル業、旅行業などのコロナ打撃の大きい産業、非正規雇用や母子家庭などの社会的弱者の生活困苦が見えてきたが、経済政策は今だ明らかではない。菅総理は、新自由主義の竹中平蔵氏を「復活」させたが、この国難をどう乗り切るのか早く道標を掲げるべきである。
 菅総理にとっても、まずは経済政策、それもコロナ対策との均衡をどうするかが一番の課題である。およそ憲法・学術・教育には、力及ぶまい。そんな中で、日本学術会議問題にみられる総理の学術、ひいては教育軽視は、日本の将来をますます暗闇に向かわせると信ずる。
 

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