元衆議院議員(茨城県第6区)[無所属]大泉ひろ子オフィシャルサイト -大泉ひろこの徒然草(つれづれぐさ)-
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日々雑感
[2023/09/02]
子供受難の時代に



来年度予算の概算要求が終わった。防衛増額と財源問題の解決しない少子化対策が盛り込まれる。また、円安、物価高、インフレで国民生活への負の影響は大きく、政府はガソリンなど事業者への補助の延長を画し、価格の安定を図ろうとする。泥沼化しつつあるウクライナ危機への対応は、アメリカの指示待ちである。原発処理水問題は近隣諸国への事前説明を尽くす外交努力をしたか疑問であり、中国の非科学性と大人げない対応ばかりが喧伝される。
 目先のことばかりに対応し、しかも国民の支持率が下がるばかりなのであれば、政権はむしろこれまでにできなかった問題を掘り下げることで危機を突破したらどうか。例えば、その一つ、児童の虐待問題だ。少子化が叫ばれる今日、新生児殺し、車中放置での死亡、ヤングケアラーの存在等、子供は受難の時代に置かれている。
 子供の虐待死ほど痛ましいものはない。司法、福祉、警察などが取り組み、とりわけ児童相談所はその第一線に立ってきた。しかし、虐待相談件数は増加の一途(約20万件 2021)であり、虐待死のニュースは後を絶たない。児童虐待防止法が2000年に出来てから20年余り、制度や社会の問題点について多くの研究がなされてきた。
 中でも、児童相談所の専門性を高めることが必至と主張するのは才村純先生(児童虐待防止協会副理事長)だ。欧米では児童虐待に関わる福祉の資格は高く、お隣韓国でも専門の修士を擁していなければならない。しかし、日本では、県の通常人事で行政マンが児童福祉司に就き、二、三年で交代する。これでは、専門の積み上げがなく、虐待問題に対し、場当たり的な対応に陥りやすい。
 その上、日本は虐待に対し、独自のシステムを持っている。欧米では、要保護児童に対するいわゆる行政処分は司法が行い、ケアについては民間の福祉の専門を使う。ところが、日本は司法の関与が少なく、よほど深刻な場合だけ家庭裁判所の判断で行われるが、大抵は、行政部門での福祉の措置に委ねられている。
 すなわち、児童相談所は、才村先生曰く、虐待加害者(通常は親)に対し司法に代わってオニとなり、その後親子関係修復などのケアではホトケとなって、二面性の仕事を請け負わねばならない。加害者を導くのが困難であると言う。
 司法の関与を増やし(法改正が必要)、児童福祉司の専門性を上げる必要性は極めて高い。行政マンを児童福祉司に充てるのではなく、麻薬取締官や労働基準監督官のような権限の大きい官職に改め、採用資格を高めることから始めるべきだ。虐待は緊急を要することが多く、裁判所は人数も少なく迅速性に欠けることから、第一線にある児童相談所が緊急時に独自に動ける場合も作る必要がある。
 1987年に社会福祉士、介護福祉士の国家資格が制定されたが、医療の資格のように業務独占資格ではないため(資格がなくても同じ業務ができる)、医療の資格のように重視されてこなかった。しかし、それが、福祉の実施は素人でよい、という日本社会独特の考えを生んだ。現在の児童福祉司もその考えに立って行われている。専門性を高め資格の社会的地位を上げることによって、給与水準も引き上げられていくはずだ。
 異次元の少子化対策で児童手当の引き上げに余念がない岸田政権だが、少子化とは「少なくなった子供を一人残らず育て上げる」ことでもあり、虐待問題に解決を見出せなければ、中途半端な少子化対策になり下がる。選挙民の多い施策ばかり考えるのではなく、日本の病理に迫る施策を考えるべきだ。そして、与党だけでなく、野党は野党で、与党をあげつらうことのみで、こうした問題に取り組んでいる者はいない。政治の貧困で、子供が受難する時代だ。

[2023/08/30]
ご神託の時代ではない



岸田政権の支持率低下が止まらない。安倍元首相の逝去から一年以上経った今も、岸田首相は安倍氏の幻影を引きずり、その手法を踏襲しようとしている。人間は、危機にあるとき、受けた教育や体験よりも「ご神託」に頼ろうとする。それが、安倍氏の「ご神託」を守ろうとする岸田首相である。
 安倍氏自身も、第一次政権の放棄や民主党政権への憎悪から、祖父岸信介の「ご神託」に頼るようになり、政治の基本とした。安倍は成蹊の坊ちゃん教育、岸田は海外子女で学んだはずが、リベラルさは捨て、専らご神託に頼る政治家になった。それは、崩落寸前の政治と不満を抱えた国民に不安を抱き、危機感を募らせたからである。
 安倍、岸田ほどアメリカにおびえる政治家はいない。一見ニコニコしながら大統領と談笑しているようであるが、結果的にアメリカの意向に従うことに余念がない。集団自衛権容認も、防衛費倍増もかくして確立した。過去においては、吉田茂は「独立すれば憲法改正だってできるのだ」と涙を飲んだ。小泉純一郎はエルビスプレスリーと同じくアメリカが本当に好きだったから、従うことに違和感はなかった。岸田・安倍両氏は先人たちを上回るアメリカ主義だ。
 しかし、両氏はアメリカに心から従っているのではない。むしろ「ご神託」で「日本は本当ににアメリカから独立しなければ戦後は終らない」と吹聴されている。アメリカはこれを知って、やんわりと指示をしかけてくるのだ。ディープステート、つまり陰謀論は今、流行だ。それも、またぞろアメリカを動かすユダヤ人陰謀論だ。
 ユダヤ人は世界に1400万人。ざっと半分がイスラエルに、残りの半分がアメリカにいて、その他の国々は少数である。イスラエルは、建国70年にも拘わらず、大変強い先進国である。アラブとの戦いは常に優位に立つ。民主主義と先端科学の国で、核保有国でもある。社会保障は整い、出生率は先進国でダントツに高い。だが、自らの国造りに忙しい、世界の陰謀どころではない。まして日本など相手にしていない。
 アメリカでは、財務長官イェレンはユダヤ人、トランプ元大統領の女婿はユダヤ人で政権中枢には常にユダヤ人がいる。しかし、多くのアメリカのユダヤ人は、普通のアメリカ人である。シナゴーグに行くのでもなく、ヘブライ語を勉強するのでもなく、ただ教育熱心なので、大学でも成績優秀者は大概ユダヤ人だ。イスラエルに共感するも、ユダヤ基金への寄付は次第に少なくなっているのが現状である。ユダヤ陰謀説は疑わしい。
 アメリカはアメリカの国益に従って日本に「指示」しているのであって、陰謀でも何でもない。日本の首相としては、日本の国益に従って政治を行えばよい。ご神託は現代の国益ではない。もっと是々非々に、アメリカだけの視点ではない政治を行わなければ、文字通り、日本の政治は崩壊するだろう。

[2023/07/21]
無神論と啓蒙思想



 上野景文氏のお話を聴く機会を得た。氏は、2010年、駐バチカン大使退任後、杏林大学を始め学問の世界に転じ、文明論の論客としてご活躍である。
 氏の文明圏の三分類はユニークである。キリスト教圏、啓蒙思想圏、脱啓蒙思想圏がそれで、キリスト教圏は伝統・保守を特徴とし、啓蒙思想圏は人間中心で、自由と人権に価値を置く。脱啓蒙思想圏は、一番新しい存在で、自然を信仰し、地球環境問題に取り組む。
 啓蒙思想圏は無神論者の集まりと言い換えることができる。アメリカを想起すれば、国内に約半分存在する啓蒙思想圏はもう半分のキリスト教圏といつも争うのが、中絶の権利である。中絶良し、女権良し、LGBT良しを基本とする。また、行き過ぎた脱啓蒙思想圏、つまり環境主義とも争う。地球「益」を否定するのではないが、国益とバランスさせることが重要と考える。
 日本は調査によれば7割以上が無宗教と答える国である。国際比較では中国の次に多い(「日本人の宗教と文化」山折哲雄監修)。ならば、日本は啓蒙思想圏と言えるだろうか。もしかしたら、21世紀に入って、アメリカとの同盟を強化し、ロシア侵攻に強い違和感を覚える現代日本は啓蒙思想圏と言っても間違いではないかもしれない。しかし、戦後民主主義を標榜するようになって長い間、決して啓蒙思想圏ではなかったと筆者は考える。
 ソ連崩壊後の90年代、世界の啓蒙思想圏が、共産主義への勝利を契機に資本主義的成長に乗り出したのに対し、日本は足踏みしたままだった。ちなみに、キリスト教圏と啓蒙思想圏の両側面を持つアメリカは、90年代、民主党のクリントン大統領の下で「経済だよ、経済」と号令を掛けられてイノベーションと経済成長に躍起となっていた。中国や新興国も伸びていった時代だ。
 同時に、日本は少子化に気付き、人口減少が眼前に現れたにもかかわらず、啓蒙思想圏としての政策を打ち出すことができなかった。キリスト教圏の持つ保守・伝統主義よろしく、女性の高等教育や社会進出を咎め、母親礼賛ばかりで、国益につながる方法論を逸してしまったのだ。それが今日まで続き、保守・伝統の少子化政策を以て異次元と呼ばせようと無理をしている。
 無神論者を突き動かすのは、信仰ではなく国益であるはずだ。外交こそは、21世紀になって改めてアメリカ選択を国益としたが、内政は何ら国益を考慮していないではないか。子供を産んだ数に応じて女性の年金額を加算せよ。女性の労働力を確かなものにするには、社会保育・教育の世界に高齢者の労働力を投入せよ。日本が舵を切ったことを示すために、象徴的な女性天皇を実現し男女平等を謳い、伝統より国益を世界に掲げてみせるのだ。
 戦後80年近くたって、今こそ無神論の良さを発揮できる日本にしよう。最も伝統を重んじる歌舞伎界に起こった悲劇は、日本に伝統を捨てる時期が到来したことを告げる出来事なのかもしれない。世襲政治家も、電通を始め利権に群がる政治家家族の多い組織も退去すべき時だ。無神論国家日本は国益を国是としてやり直せ。

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